「カサブランカ」2021 日展

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カサブランカ F100

<初絵(モデル・娘)>

一目見た時から、父の絵のイメージにぴったりだと思ったこの衣装、ロサンゼルスのフリーマーケット(蚤の市・flea=蚤)で手に入れました。そんなに古いものではなさそうで、1970年代に活躍したデザイナーのタグが付いています。この頃は、テレビドラマでも「大草原の小さな家」が放映され大人気だった頃でもあり、このデザイナーの服には西部開拓時代のアメリカの女性たちを連想させるデザインのものが多くあります。

決して高価な貴族の服ではなく、素朴な美しさと愛らしさ、そして背筋を伸ばし真っ直ぐに前を向きたくなるような、そんな気持ちをもたらしてくれる服です。

ふわふわと柔らかなガーゼ生地ながら、デザインの効果でとても凛として見えます。

輝くような白さはその生地の風合いも相まって光を纏っているよう。細い紫のベルベットのリボンが、ほどよく上品に甘い雰囲気を引き締めています。

凛としてたおやかに、その明るさで周りを照らし、その柔らかさでさりげなく優しく包む。

こんな人になりたいと思わせる洋服です。

そして、父の絵はそんな絵なのだろうなと思うのです。

<清明>

こうして大作の衣装は娘たちが私の好みを心得て、それぞれに工夫して準備してくれます。

人物画において、衣装は絵のテーマに関わる大きな要素ですが、同じモデルで制作を続ける私の場合はさらに、衣装選びは新しい絵を描く動機やきっかけになる最初のステップであるといえます。娘たちの選んでくる衣装により私は意欲を得てその衣装を生かすよう背景など場面設定を考え、構図を作り制作が始まります。

制作において私が一番苦労する所があります。それは顔です。バランスの取れた良い顔と雰囲気のある表情、それは人物画の大きな魅力です。だから、良い顔になるまで何度も何度も修正し追求します。

モデルに似ていることを追求するというよりは、その人らしいこと、良い表情であることが気になります。そうしていると最終的には自ずとその人にそっくりになっていき、絵の中の人物がより真実味を帯びてきます。そこにはモデルの意見も入りより苦労をしますが、モデルをそこに置いてフィクションなしに描いている分、モデルにも納得してもらわなければ自分も気持ちが悪いのです。

ビデオをご覧になり、私が筆を持ち画面を触るより眺めたり混色する時間の方が多い事に気付くと思います。それは私の制作が「よく見て描く」を大切にしているからです。白い衣装であればその色の変化を、皺の様子を、よくよく見て描きます。バックの緑も緑の色合いや明るさを観察して描きます。この様に、よく観察し自然に迫ることにより絵ができていく、それが私の制作スタイルです。

おまけ

バックのカサブランカを4号の小さなキャンバスにも描きました。数年前、絵のモチーフにと妻が植えた球根が始めは一輪しか咲かず、モチーフには程遠いと思っていましたが、どんどん増えてたくさんの花を咲かせるようになりました。豪華な花ながら、庭に咲く姿は自然で粗野な魅力があり、力強く素朴な味わいがあります。植え込みに咲いているそのままを写生しました。

日展 

東京:2021年10月29日(金)~11月21日(日) 
    火曜日(祝祭日の場合は翌平日)休館
    ※ただし11月3日(火・祝)は開館
    11月4日(水)休館(11月4・10・17日休館)

    国立新美術館

京都:2021年12月18日(土)~2022年1月15日(土)
    京都市京セラ美術館 
    月曜日休館(祝日の場合は開館)
    年末年始(12/28~1/2)

名古屋:2022年1月26日(水)~2月13日(日) 
    月曜日(祝祭日の場合は翌日)休館
    愛知県美術館ギャラリー

大阪:2022年2月26日(土)~3月21日(月・祝)
    月曜日(祝祭日の場合は翌平日)休館
    大阪市立美術館

安曇野:2022年4月23日(土)~5月15日(日)
    月曜日(祝祭日の場合は翌平日)休館
      安曇野市豊科近代美術館

金沢:2022年5月28(土)~6月19日(日)
    会期中無休
    石川県立美術館
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