今年も春の白馬へ

信州へは、教師をしていた二十代の頃から、五月の連休を利用して毎年恒例のように写生に出かけていました。林檎の花が咲き、田に水が入り、雪山が美しい時を迎える頃です。

昔は南信州の駒ヶ根方面へ行くことが多かったのですがいつの頃からか北信の安曇野や白馬が多くなりました。白馬にお気に入りの民宿「かくひら館」があり、その近辺にたくさんの写生ポイントを見つけたからです。初めて宿泊した時は先代がご健在で、若夫婦に長男が生まれ鯉のぼりが上がっていました。その様子はほのぼのと、端午の節句の良い風景で、絵に描きました。今は若夫婦の代になり、その長男も30歳を過ぎ、長いお付き合いになります。

白馬薫風 F8     民宿 かくひら館

かくひら館のある白馬村大出には白馬村を象徴するようなこんな風景があります。幾度となく描いている風景です。↓

白馬の春

白馬本峰の右端にある雪形が馬に見えるでしょうか(一番右の谷のところ、立木のすぐ左、馬が左上に駆け上がる様)。丁度田んぼの代かきをする頃にこの雪形が出るため、代かき馬が白馬になったとも言われています。

時代とともに、美しい田んぼがなくなったり、魅力のある古民家が倒されたり、がっかりする事も度々ありますが、主人公の雪山は変わりません。天候が良くて雪山が見えれば絵になるのです。今回も三日間天候に恵まれ、存分に描くことができました。

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早朝5時に鎌倉を出発し8時には穂高へ。天候も次第に回復し常念岳が顔を出す。以前描いた万水川(よろずいがわ)にかかる橋のたもとで描く。形のいい信州らしい民家と蔵が変わらずにあり嬉しい。常念が雲で見え隠れするが、快晴の時の山と違い湿った空気を感じる山にも魅力がある。

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安曇野の北の端、大町にある林檎園。林檎の古木とその向こうにアルプスが見える。農作業小屋はずいぶん朽ちてしまったが絵にはまだ大丈夫。白い花は交配用の梨の花。林檎の花はまだ蕾、これから林檎の花が咲きこの道にたんぽぽが咲く。今はまだ春先の様子。大好きな写生地。

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白馬のまぐろ道より白馬三山(左から、白馬槍ヶ岳、杓子岳、白馬本峰)を望む。いつも描いていた田んぼがつぶされ工事中。また一つ好きな写生地がなくなった。アングルを少し左にずらし道と電信柱を入れて描いた。雲一つない青空で、雪山とのコントラストにより空がやたらと青く見えた。

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白馬村の山中にある青鬼村へ。ここから見えるのは五竜岳。茅葺だった形のいい民家と棚田が美しく、画家やカメラマンが集まる人気スポットである。

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先日写生の後に下見しておいた松川の清流と白馬三山が見える場所へ。清流のエメラルドグリーンが美しく、まだ新緑の前でも雪解けの春の勢いを感じる。さて今回は写生の他にもう一つ目的がありました。

「白馬三枝美術館」

白馬村には近現代に活躍した画家が描いた信州の風景画を中心にコレクションしている、「白馬三枝(はくばさえぐさ)美術館」があります。この度、私の作品が収蔵され展示されたので行ってみました。たくさんの作品があり、100号を超える大作も多く、現場で描かれたと思われる生き生きとした筆勢の画面からは信州の空気が伝わってきます。”絵の価値観”を共有できる作品が多く、親しみを感じます。建物はシンプルな外観ながら、中に入って天井を見上げると、寺院建築を思わせるような大木の梁が見える頑健な構造。立派な建築にも驚かされました。信州にお運びの折には一度お訪ねいただきたくおすすめします。

白馬から鎌倉のアトリエに帰ると庭のバラが私の帰りを待っていたかのように一斉に咲き出しました。自分で育てた花は可愛くもありせっせと描いています。忙しいことであります。(^^)

ピエール・ド・ロンサール
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